今朝、伊藤計劃先輩のことというエントリがはてなトップに上がっているのを目にして、ああ、まさか、と思いつつクリックした。伊藤さんのブログを読んでいたわけだから、病状が良くないのは知っていた。彼のウェブサイト/ブログの一読者にすぎない私だけれど、すごく悲しい。やりきれない。


彼は、とてもかっこよくて美しい映画批評を書く人だった。数年前、わりと熱心に映画館に通っていた時期、映画を見た後にウェブで映画評を読むのを楽しみにしていた。いくつかのサイトを巡回していたのだけれど、彼の批評が一番好きだった。

映画と批評の間には、というか、作品と批評との間には、ある意味では、たいした違いはない。人生における一定の時間を消費して、映画館で映画を見ること、ネットで批評を読むこと。私はそれらを一連の体験として記憶しているし、それはかけがえのない記憶だし、そのなかに彼の文章が存在している。『リベリオン』とか、ジェイソン・ボーン三部作とか、えらい盛り上がりようだったなー、なんて。『ダークナイト』は私も大好きだ、もちろん。認めざるを得ないことだが、私の映画観は、確実に彼に影響されている。

ゲームも全然やらないしSFもほとんど分からない私にとっては、彼は「映画批評の人」だった。小松賞でいいところまで行ったときには、創作もできる人だったのか、と驚いた。といっても、読もう読もうと思っていて、いまだに読んでいないのだけれども。これから、読む。つまらんはずがない。

先月、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(実に、素晴らしい映画だった)を見たとき、伊藤さんはきっとこれを気に入(ってい)るだろう、と思った。今日、職場でふと、彼はあれを見られなかったんだな、と考えて、涙が出てきた。
これから先も、面白い映画を見るたびに、「伊藤さんならなんて書くかな」などと考えてしまうのだろう。