マウリッツハイス美術館展

東京都美術館リニューアルオープンということで、マウリッツハイス美術館展を見てきた。リニューアル前の東京都美術館って、上野駅のほうから歩いて行くと、ちょっとした森の向こう側の隠れたところにあるという感じだったけど、今日行ってみたら、噴水前の広場から美術館まで見通せるようになっていた。噴水近くに、独立した建物で、スタバができていた。そして、ブルーシートハウスが無くなっていた。スタバがあるのは便利だが、そんなことより野宿者排除するのやめてほしい。
東京都美術館はそうとう長期間にわたって一時閉館していたが、そのわりにはそんなに建物に変化ない感じがした。赤茶色のレンガの外観はまったくそのまま。エスカレーターやエレベーターがついて、バリアフリーになってる。リニューアルオープンってずっと先の話だなーと思ってたらもうオープンしてしまったので、死ぬのはずっと先の話だなーなどと思っていると自分の人生もすぐに終わるのだ。
フェルメール真珠の耳飾りの少女」の前が、異様に混んでいた。パーティションでジグザグに列を作って、立ち止まらずに御覧頂いておりまーす、お詰めください、などと誘導していて、パンダかよと思いつつただ並んでいるのも馬鹿みたいなのでPodcast聞きながら待ってた。間近で見ることはできた。私はフェルメール好きだけど、正直これが彼の作品の中で大傑作かっていうとそうでもないと思う。窓から室内に光が入ってるのを描いた絵のほうがフェルメールっぽいフェルメールで、良い。今なぜか上野でもう1箇所フェルメールが見れる展示をやっていて(ベルリン国立美術館展)、そちらに出ているもののほうが好き。壁がぼーっと白く光っている。しかし日本人もフェルメール好きで、現存する作品はわずか三十数点だというのに、しょっちゅう日本に持ってきているような気がする。
マウリッツハイス美術館展の白眉は上述のフェルメールを含む肖像画を展示しているブロックだが、最高だったのはアンソニー・ヴァン・ダイクによる、夫婦を描いた一対の肖像画。ヴァン・ダイクは本当にすごい。息をするのを忘れるような迫力がある。近づいたり離れたり1枚ずつ見たり2枚同時に眺めたり、かなりの時間をこの絵の前で過ごしてしまった。ちなみに大エルミタージュ美術館展でもヴァン・ダイクが2枚出てるので、そっちも見るべき。ヴァン・ダイク以外の展示作品だってすごい。平板な印象の画面の中に緻密な装飾を描き混んでいるハルス(小品である「笑う少年」のほうには、見ていてわくわくするような鋭いタッチの躍動がある)も、闇の中に滑りこむ光を描くレンブラントも、ヴァン・ダイクの師匠であるルーベンスも、すごい。ルーベンス肖像画には奥行きがあり情緒があり内面がある。この良さは説明しやすい。けれどヴァン・ダイクはまた全然違ったベクトルで素晴らしくて、それは内面や感情とは無縁である。このすごさは説明しにくい。物質がそこにむき出しになっている、とでも言えばいいのだろうか。とりあえず写実的で精緻な絵ではある。ただ、Wikipedia情報では

ゾフィーはこのときの印象を「ヴァン・ダイクが描いた素晴らしい肖像画を通じて、私はイングランドの女性は美しい方ばかりだと思い込んでいました。しかしながら驚いたことに、肖像画であれほど美しかったイングランド王妃は実際にお会いしてみると、小柄でひょろ長い痩せた腕をした出っ歯の女性でした・・・」と書き残している。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%AF

という話(ひどいこと言うよね)なので、見た通りに書いていたというわけでは無いようだ。実際、描かれているのはわりと美男美女である。
まあ、とにかく本物をナマで見てみろってことですよ。(東京ブロガー的発言)