天上から地上へおりるドイツ哲学とはまったく反對に、ここでは地上から天上へのぼる。

天上から地上へおりるドイツ哲学とはまったく反對に、ここでは地上から天上へのぼる。すなわち、人間がかたり、想像し、表象するところのものから出發し、あるいはまたかたられ、思考され、想像され、表象される人間から出發して、ここから具体的な人間にたどりつくのではない。現實的に活動している人間から出發し、かれらの現實的な生活過程からこの生活過程のイデオロギー的な反射および反響の発展をも叙述するのである。人間の頭のなかのもやもやした形成物もまた、かれらの物質的な、経験的に確認できる、そして物質的前提にむすびついた生活過程の必然的な昇華物である。かくて道徳、宗教、形而上学その他のイデオロギーおよびそれらに對應する意識形態は、もはや獨立性のみせかけをもたなくなる。
マルクスエンゲルスドイツ・イデオロギー』(古在由重 訳)